早口は聞き取りにくい

・〇〇さんの言葉は聞き取れるけど、△△さんの言葉が聞きとりにくい
・ニュースは聞こえるんだけど、バラエティーやドラマだと聞き取りにくい
・(ご家族様目線で)補聴器をつけているのに、私の言葉を理解していないみたい

このようなお悩みを伺うことが少なくありません。
詳しくお話を伺うと、ニュースを読むアナウンサーさんの声は良く聞こえるけど、バラエティーや情報番組のコメンテーターの声、早口な方の声を聞き取りにくいと感じていることがとても多いです。
ここでいう早口は、若い方は早口と感じないくらいのスピードです。
若い方が”普通”と思った速度で歩いていても、年齢を重ねると歩く速度がゆっくりになり、若い方の”普通”を速く感じます。それと同じです。

今回は、なぜ早口が聞きとりにくいのかお話ししたいと思います。

内耳の中には、音を伝える役割を担う数万本の毛が生えた細胞(有毛細胞)が並んでいて、耳の穴~鼓膜と伝わってきた音に反応して、この数万本の毛が揺れています。私たちは20歳を超えると徐々に、その有毛細胞の毛が減少するために聴力が低下していきます。これが加齢性難聴です。

有毛細胞の毛が減少すると、内耳から脳にいくはずの音の情報の多くが欠落するため、音に含まれる微妙な周波数の違いが分からなくなります。
周波数の違いが分からなくなると、ぼやけた、割れた、歪んだ音に聞こえます。そのため、聴力低下だけではなく、耳に入ってきた言葉の内容を認識するのに時間がかかるようになります。
加齢による脳の機能低下が一因になっている場合もありますが、このように、多くは内耳の機能の低下によります。

上記のような原因により、耳に入った会話音声を瞬時に処理できなくなるため、補聴器を着けていたとしても早口は聞き取りにくいのです。
バラエティ番組などで、若い芸人さんの早口のギャグを聞き取れず、家族が笑っているのに一緒に盛り上がれないなどは典型的な事例です。
早口以外にも「ボソボソ声」「抑揚のありすぎる声」など、聞き取りにくい声があります。

有毛細胞の毛は20歳をピークに数十年かけて少しずつ抜けていくため、言葉の聞き取りも、数十年かけて少しずつ落ちていきます。
そのため、大部分の高齢者には、自分の言葉の聞き取りが悪くなっているという自覚がありませんし、なぜ言葉がハッキリしないのかわからないのでうまく表現できなかったりします。

最後に、このブログをご覧になった方へお願いです。
周りに補聴器をつけている方がいらっしゃいましたら「ゆっくり・ハッキリ」話すよう意識をしてください。
聞こえに悩んでいる方は聞き取りにくいお相手の方に「ゆっくり話して」と具体的に伝える等、お互い思いやりを持って、会話を楽しんでください。